少年カワシュー・Vol24/八千代篇 ~好きさ、京成~

少年カワシュー

受験生カワシューは、週3で塾通いをしていまし
た。学校の授業が終わると、家で腹ごしらえを
して、夕方からの講義に向かいました。目的地
は、八千代台から7駅先の京成八幡(最寄りの
JRは本八幡)で所要時間は25分程度でした。

さすがに、学校の様に、人間ウォッチングをして
いる場合ではなく、周りから取り残されまいと、
黒板に向かいますが、特に、数学がついていけな
いことが多く、モヤモヤした日々を送っていまし
た。今思えば、都内に近い立地であったので、私
立向けに割と高めのレベルの内容だったのかもし
れません。いえ、いえ、カワシューの努力不足と
言った方が正解です。

と、まあ、塾通いに関しては、”おもしろい話”と
いうのがなく、ブログでは、単なる備忘録になっ
てしまいますが・・・
一つだけ、”ワクワク”でもなく”ドキドキ”でもな
い、塾の数学の授業の様に、”モヤモヤ”すること
が、ありました。それは、帰りの電車の”車両”ど
んなのが来るかが、気になって、しょうがなかっ
たことです。
それによって、その日の総括として、よかった日
のか、悪かったの日なのか、を結論ずけるという
勝手なルールを決めて、楽しんでいました。
塾の数学の授業の”モヤモヤ”が、幾分か解消でき
るのか、という気持ちもありました。

まず、「当たりの電車」は”3050形”という、上部
がベージュ(肌色)下部が橙色(印刷屋さんは
”金赤”と呼ぶ)の電車でした。当時はまだ、冷房
はなく、窓開けと、扇風機で、何とかなったもの
です。
だいたいは、急行で”蛍光灯”ということもあり、
お客さんもそこそこ乗っていて、明日へとつな
がる、希望を持てる車両で、絶大な安心感を得ま
した。
カワシューはそれを「当たり」としていました。

一方、「はずれの電車」は”200形”という電車。
やはり、ツートンカラーなのですが、運転席と、
客席の窓がある部分は、薄い緑とベージュが混ざ
ったような色なのですが、運転席から下部は、
”深緑”。
絵具で言うと、きれいな”緑”に、暗闇の”黒”を、
混ぜ込んだ、何とも、どす黒く、”地獄”の様に
くすんだ色。

時刻は22時頃、暗闇からライトを灯して入線する
ので逆光となり、その時点では”シルエット”とし
てしか見れないものの、ヘッドライトが、200形
は屋根の真ん中に、1つ、3050形は2つあるので
それでもう、勝負ありでした。

そして、残念ながら”200形”と分かった日には、
ホームで、のけ反るほどの落胆。
車内の天井には、扇風機は付いておらず、蛍光灯
ではない、”丸いガラスのカバーで覆われた電球”
の照明がありどんよりと車内を灯していました。
また、床は”木製”で、時には、防錆剤の匂いが、
きつい場合があり、落胆を倍増させました。
車内は暗く、各駅停車だったこともあり、人影
まばらで座っている乗客は、心なし俯き、病んで
いるように見え”どんよりとした空気”が漂ってい
るかのようでした。

例えていうならば、”千と千尋の神隠し”で、
”千尋”と”カオナシ”が乗っている電車のようでし
た。行先は”佐倉”と出ていましたが、それが本当
なのか、はたまた、八千代台に無事に到着するの
か?という、疑心暗鬼な気持ちにさせる、電車で
した。
しかし、後々、思ったのは、”200形”が連荘で来
るとは限らず、”ひと電車見送ってみる”という、
選択肢もあったかもしれません。
それをやらないカワシューって、、、変な奴でし
た。
本当は陰気な”200形”が好きだったのかもしれませ
ん。と言うより、”200形”が来た時の、落胆に比べ
れば、数学がイマイチわからず、落胆することな
んか、たいしたことではない、という”心の担保”
になっていたように思えます。