いすゞ・フローリアン ~忘れえぬ昭和の銘車~

少年カワシュー

今から遡ること半世紀前に中学生カワシューが暮らしてい
た、札幌での思い出話です。

当時住んでいた、札幌の西部の手稲という住宅街は、まだ
地下鉄もなく、また我家にはマイカーもなかったため市街
地に行くにはバスしかありませんでした。
近所には日々の食料品を買えるも店はあったものの、今ど
きの郊外型の大きなスーパーはなく、少しまとまった買い
物をするには、市街地の大型店舗や百貨店に行くしかなく
その往復はタクシーと決まっていました。

休みの日に買い物に行くときは、父母は迷わずタクシーを
呼んでいました。ほかの生活費は節約しても、この場所で
日々の動きを確保するためにはタクシーにお金をかけるの
はしょうがないことだ、と言っていました。
その頃にネットスーパーがあったら、どんなに便利だった
んだろうと思っています。

迎えに来るタクシーは、クラウンやセドリックではない、
間違いなく、いすゞ「フローリアン」という自動車でした
そもそも、いすゞといえば、バスやトラックなどの大型車
を作っているメーカーというイメージがありますが、実は
乗用車も作っていたんです。

荷物持ちに一緒に来てほしいと、母に頼まれましたが、の
らりくらりとかわし、それなら、せめてタクシーの到着を
確認してほしいと頼まれ、外で待ちます。

雪が降りしきる中、黄色いフォグランプを灯したフローリ
アンがまもなく到着です。
フロントグリルは受け口ではなく、出っ張っているボンネ
ットからバンパーに向けて引っこんでいる状態。ヘッドラ
イトは台形でどことなく”たれ目”にみえるので、

「(涙目で)この雪のなか、ボク頑張って迎えにきたよ」
と訴えかけるような顔に見えました。決して精悍な顔つき
ではない。お人し顔。

ボディは寸胴のガッシリのメタボ系。前席はベンチシート
でコラムシフトだったことも、タクシーに採用された所以
かと思っています。
ただ、天井からトランクにかけてのラインが”なで肩”で
なんとなく、情けなさ度が高い。

全体的にには、シャープさ、精悍さはなく、泥臭い、無骨
な、ロシアの自動車と言う印象です。

しかしこの「フローリアン」なんと、いすゞの他車117
クーペやピアッツァもデザインした、世界的にも名だたる
工業デザイナー、「十字野郎」いや、失礼、ジウジアーロ
の作品です。お見それしました。

ああだ、こうだとフローリアンの感想を語りましたが、
「ええぃ~控えおろぅ~!お人よしだの、メタボだの好き
勝手にいいおって、ジウジアーロ様の作品の御前である
ぞ!頭が!頭が高い!」と、格さんからお叱りを受けそう
です。