少年カワシュー・Vol21/八千代篇~金子君~

少年カワシュー

当時は”業者テスト”が花盛りで、学校の中間・
期末テストの前後に必ずやっていて、テストが
ない週はなかったのを覚えています。
但し、業者テストは、一部の教育現場で、採用
の見返りで業者からリベートを受け取るなど、
不正の温床として摘発され、その後、姿を消し
ました。
業者テストは、全国版と地域版があったようで
すが、その、上位、に入っていたのが、
5組の、金子君でした。

金子君の家は、カワシューの家とは目と鼻の先
でしたが、帰り道で出会うことがあっても、あい
さつ程度の付き合いで、会話を交わす仲ではあり
ませんでした。
金子君は、いかにも秀才らしく、詰襟のホックも
きっちり留めて、目力を感じる、クールな感じで
したが、髪型が特徴的でした。
その髪型とは、前髪は横一文字にくり抜かれて
いて、よく言えば、マッシュルームカットにもみ
えるのですが、後頭部は、唐突に髪の毛がある部
分と刈り上げの部分の差が、強烈で、
今風にえば”ツーブロック”というタイトルがつ
くのでしょうが、当時の、少年カワシューの目で
は、”アマゾンの裸族”のような髪型に見えました。
さすが、秀才、髪型にも知性や個性があふれてい
るのだな、、と感心している反面、金子君を
リスペクトしている僕でも、この髪型にはしない
だろう、と思ったものです。

そんな、カルト的な香り漂う、金子君の家と、
カワシューの家は、空き地を挟んで建っていて、
2階のカワシューの部屋からは、金子君の部屋
が見えていました。
カワシューが”鶴光のオールナイトニッポン”を聞
いて、悶々としているいる時間も、金子君の部屋
には、煌々と明かりが灯ってガリガリ勉強してい
るな、という様子がうかがえたので、ならば、
カワシューは、電気だけでも灯して、けん制して
やろうと思いました。