少年カワシュー・Vol48 ~バイトで港の男になる・1~

少年カワシュー

浪人中から大学生にかけて、いろいろなバイトを経験しまし
た。なかでもバイト代がよかったのが、輸出車の船積みのバ
イトです。
この船積み作業にかかわる、人集めを仕切る、女親方に頼ん
でおくと習志野・茜浜や船橋、はたまた追浜の港でバイトの
口があるのです。

1980年初めの当時はまだ、海外における生産の拠点があ
まりなかったので。車の輸出は盛り上がっていてバブリーな
時期だったと言えます。
船積みの車は、ホンダのアコード、スバルのレオーネ(後の
レガシー)、日産のマーチ(日本名パルサー)、430(日本
名セドリック)、時には4tトラックも運転しました。
慣れない左ハンドル、また、埠頭の近くの空き地で長い時間
駐車していたため、エンジンの吹きも悪く、今では考えられ
ない、エンジンがいきなり止まる、「エンスト」もしばしば
ありました。
船積みのバイトは、新人のうちは埠頭の近くの空き地から岸
壁まで運ぶ作業をしますが、親方みたいな人に認められると
岸壁から船内に昇格します。言ってみれば、Jrからメジャー
デビューというイメージです。
しかし、このバイトの魅力はバイト代です。拘束時間にかか
わらず、1日のバイト代は埠頭前までの陸送は、5千円でし
たが、船内に昇格するといっきに倍の1万円となるので、船
内に呼ばれたいと常々思っていました。1万円は貧乏学生に
とっては大金です。
しかし、自分ではどうすることもできず、急な欠員、予想以
上に台数が増えるなどのことがなければ、そのチャンスは巡
ってきませんでしたが、ある日、同じ埠頭に行き先が違う
2隻の船に積むことになり、陸送で5回目のカワシューにも
船内の声がかかりました。