少年カワシュー・Vol43浪人篇 ~錆びたナイフ~

少年カワシュー

美大受験の”予備校”なので、晴れて、大学に
合格すれば、卒業なのですが、ちょっと変わっ
ていて、ソフトボール大会や、バーベキューの
日帰りバス旅行などの行事がありました。

みんな、一日中、黙々とキャンバスやデザイン
のボードに向かい、デッサンをしたり、来るべ
き日に備えて、心に余裕がなくなってしまいが
ちでした。

しかし、そんな”黙々の人たち”に1日や2日
気分転換のの時間を与え、目標に向かうために
ギアをあげる手伝いをしよう!結果、我予備校
の合格率も上げていこう!という狙いがあった
のかもしれません。

そんな、バーベキュー日帰りバス旅行の帰りの
バスの中の出来事。歌いたい人はマイクを回す
から言ってちょうだいと、主任先生のひとこと
その頃としては、めずらしく、バスにはレーザ
ーディスクのカラオケが装備されていました。

いきなり、そんなこと言われても、困るよと、
誰も手を挙げない状態のなか、主任先生が、
「んじゃ、俺が裕次郎の『錆びたナイフ』歌う
から」と。完全に”裕次郎モード”
”砂山の~♪砂を~指で掘ってたら~♪赤く錆
びた♪ジャックナイフが出てきたよ~♬」
といい気分。裕次郎は知っていたが、裕次郎の
歌まではあまりよくわからず、みんな引いてい
ました。

すると、近くにいた同級生(どうみても年上)
が、隣の席に人に向かって
「先生、また『錆びたナイフ』だよ、俺もう4
回は聞いたね。」と、どっきり発言。

あんた、4回ってことは、このイベントが毎年
1回あるとしたら、過去に3回も参加してるの
?この予備校に何年もいるの?何浪しているの
ですか?と、さすがに動揺をせずにはいられな
くなり、先生が歌う「錆びたナイフ」を聞くの
は、最初で最期にしようと誓ったカワシューで
した。