浪人中は、予備校がある、お茶の水まで、毎日
通い、デッサンとデザインの課題に向かう日々
が続きました。
その予備校での交友関係は、ほぼ無に等しいか
ったと記憶しています。代わりに市谷の予備校
に通う、同級生が、冷やかしにチョイチョイ遊
びにきてました。人のところに遊びに来ている
場合じゃないのに。
そこの予備校生と言えば、丸眼鏡、髭を蓄え、
後ろ髪を束ねている講師のような風貌の生徒。
鼻と唇にピアスをして、ベルボトム(今はブー
ツカットって言うんですか?)のジーンズ、
シュークリームのようなデニム地の大きな帽子
をかぶり、中庭でいつも煙草を吸っている、ア
ンニュイな雰囲気のお姉さん。等々、明らかに
カワシューより年上と思しき人がいました。
実際、彼らとは、言葉を交わすことはなかった
ので、年齢については、推測の域をこえません
でした。が、その人たちを見るにつけ、いっつ
たい、この人たちは何浪しているんだろうと思
うと同時に、美大受験のハードルの高さを改め
て感じました。
お茶の水は、予備校や大学が多くある、学生街
でもあり、あまり千葉から出たことが無いカワ
シューにとっては、眩しいばかりの環境でした。
昼飯は、大学の学食で食べることが多かったの
ですが、時々、サテンで、カレーやピラフのラ
ンチをとることもありました。
そのサテンが鬼門でした。そこで出会ったのが
当時、空前のブームとなっていた「スペース
インベーダー」というテレビゲームでした。
机自体がゲーム機なんで、飯を食うだけでは済
まないのです。浪人生カワシューは、飯もそこ
そこに、そのスペースインベーダーに、どっぷ
りとはまってしまうのでした。
自分の小遣いくらいは、パン工場や、宅配便の
仕訳のバイトでなんとかやっていたので、債務
はなかったのですが、そのサテンに行く頻度も
高くなり、つぎ込む額も増えてしまいました。
結果、飯を食いに行くんだか、ゲームをやりに
行くんだか、わからなくなるほど、その中毒性
に溺れてしまう「ガチのヤバシュー」なのでし
た。