船積みのバイトにありつけるか否かは、女親方から1本の電
話でした。電話は母がとったりするのですが、その時は、
「〇〇港運の、△△です。いつもお世話になっています。
秀平君御在宅でしょうか?」と言う丁寧な調子だったと聞い
ていましたが、電話をかわると
「おっす!今度は金曜日、習志野。いつも通り7時半集合。
ついでに、2人ほど来れないか、当たってくんねぇか?」と
おっさん口調で、行けるとも、行けないとも言ってないのに
一方的に、電話を切る悪い癖。知らぬ間に手配師の下請け状
態となってしまっていた。
この、女親方、年齢は40代くらいの大柄な人で、体型は
3ナンバーにとどまらず、1ナンバー(大型トラック)で、
迫力満点。肩までの髪は程よいウェーブ、メイクはバッチリ
で、目の覚めるような深紅の口元が印象的でした。
また、お召し物はと言うと、大胆柄の原色系のヒラヒラのス
カートととハイヒール。海風にスカーフをなびかせる姿は、
男くさい港の現場には似つかわしくなく、異彩を放っていて
いつも、渡哲也の「水割り」という曲を歌っていました。
女親方は、朝が早い港の始業時前には埠頭に着いていて、自
分が手配した人員の点呼をします。
前日の酒が残っているのか、朝陽が眩しそうな表情で、咥え
たばこで現れ、
「今日はスバル、2500(台)。16時出航ね。暑いからや
かんの水飲んで、塩舐めてね」と酒焼けのハスキーボイスで
はあるが、簡潔明瞭の挨拶。
また、船内デビューのカワシューなどに向けては
「オ~イ、バイト、川原、船内初めてだよな、急がなくても
いいから、安全運転な。」と、一応常識的な声掛け。
一方、常連のバイトには
「〇〇!この野郎!ちんたらやってんじゃねーぞ!ケツ振る
くらい、急げよ!時間勝負だかんな!」と、なんともちぐは
ぐな、声掛け。
その、女親方、私生活はおろか、そのプロフィールは知る由
もないのですが、港の男たちを束ねるには、男勝りのキャラ
クターを演じなければ立ち行かなかったんだろうと思います
その後、カワシューがサラリーマンになっても度々、バイト
の依頼をしてきて、勤めがあるからと断りましたが、
「ちっ!薄情な奴だな!親父が危篤だとか言って来いよ!」
とハラスメント発言。その押しの強さに負けて何度か応じて
しまったことがありました。
アイキャッチ画像では女親方の姿をAIで再現してみました
が、誇張など一切ありません。このバイトをしたことがある
人なら、絶対に納得するはずです。髪の色は黒だったので、
再現率95%としましたが、制作者のカワシューも高い再現率
だと自信を持っています。