カーナビがない時代、遠出のドライブは助手席のカミさん
が地図を広げて悪戦苦闘。
ただし、昼時になるとお腹がすいて、エネルギー切れとな
るため、誤報を連発してしまうこともしばしば。
「生ナビ」のバグです。そのたびに
「交差点、右と左では大違いでしょ?」とチクリと言うと
「Uターンすればいいことでしょ、細かいことを言ってん
じゃないわよ、ったく、ちっちゃい男だね」
と倍返し。そんな、小さな諍いもあったりしましたが、そ
れはそれでクスっと笑いがこぼれる、”ナビ無し時代”の、
旅の一コマともなっています。
時は流れ、先代の車に、念願のカーナビを導入しました。
右だ左だ、左斜めだ、休憩が必要だとか、到着すると、
「目的地に到着しました。案内を終了します。運転お疲れ
さまでした。」
と、ほっこりするような、ひとこともあり、快適なドライ
ブを楽しむことができました。
そんな、初代カーナビに「さゆりさん」と名付けました。
冷静沈着、カラオケの18番は、もちろん「天城越え」。
酸いも甘いも経験し、落ち着いた声の持ち主。そんな昭和
のしっとりとした女性をイメージしました。
ただ、さゆりさんには通信機能がなく、道路データ更新は
無料の1回しかしていませんでした。
そのせいもあり、ほどなくして郊外を走ると新しい道を案
内することができず、行きどまったり、大回りをしたりす
るような場面もありました。
ある日、会社の先輩と房総を走っている際に”けもの道”
にはまってしまったことがありました。対面で車が来たら
絶対絶命の場面、話しかけてもしょうがないのは承知で、
「おいおい、これ、道合ってんの?間違えてるでしょ」と
少々、いらだち気味に言い放つと、
相変わらず右だ、左だと言うばかりでらちがあきません。
結局、データのない道をぐるぐるループしていることに
気づき、Uターンして、ルートを変更、再出発しましたが
その後は心なし、言葉数が減ってしまった”さゆりさん”。
その時、先輩のひとことだったか、天の声だったか
「君が、ああだ、こうだと、ゴチャゴチャうから、機嫌
を損ねてやる気をなくしたんだよ、これ、怒ってるね」
と声が聞こえ、それもそうだと、反省し納得しました。
音声認識アプリはまだない時代、どうやら、さゆりさんは
ひと足先に人の気持を読み取ることができていたようです
ところで、今のカーナビは、仕事か、恋か、の選択に悩む
アラサーの”まいちゃん”。
通信なのでデータ更新は問題なく、誤報は皆無なのですが
時々人間的な”さゆりさん”のことを思い出します。
”さゆりさん”快適なドライブをありがとうございました。
そして、あの時は、ごめんね。


