Yes!カワシュー・Vol 21 ~涙、涙の登記所通い~

Yes!カワシュー

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環境が変わって、2カ月あまり、月島不動産を起点にカワ
シューの日々はと言うと、 当初は、飯田橋の本社に出勤
して、新富町から歩きで月島 に向かい、業務終了後は月
島から直帰という生活が続きましたが、そのうち、直行
直帰が定着しました。
ただし、金曜日はY課長の分とあわせて、1週間の業務報
告となる”週報”を提出しに夕方本社に行って直帰していま
した。現代ならメールかテレビ会議で済んじゃうんですが
本人の捺印が押されている原本主義らしく、FAXはNG
とされていました。
たかが、手書きの業務報告なのに大袈裟だと思いました。

カワシューの主な業務は、九段下にある登記所(法務局)
へ行って、土地の登記簿謄本を申請し、取ってくることで
した。
交通手段は、月島不動産の社長が手当てした”新車” の自
転車でした。片道20分は雨でなければ、気分転換にな
るし、いい運動でした。

登記簿謄本は、申請書を書いて、申請料にあたる登記印紙
買って、貼って窓口に出すと言う流れですが、当時は空前
の土地取引ブームで、カワシューと同じような人が大勢き
て申請していたので、1時間待ちは当たり前でした。
そんな仕事を、来る日も来る日も、判で押したようなこと
をしていたので、登記所(法務局)の窓口のおばさんとは
顔見知りになるほどでした。
真冬だったのですが、或る日、申請書に汗がぽたぽた流れ
ボールペンで書いた字がにじんでいるのを見て

「お兄さん、とりあえず、汗ふきな。急いでいるのはわか
るけど、庁舎の前は、車通りが多いから信号はよく見て横
断歩道渡って来るんだよ」
と、母親の様な、あたたかい声掛けに、こらえきれずに、
目頭がジワっとしてしまい、汗を拭きつつ、泣きべそ交じ
りの微笑みで返したところ、おばさんは何も言わず、ウン
ウンとうなずいてくれ、すぐに、申請書を指さし、
「あっ!ここ(の欄)抜けてる、書いといて」
と、話題を変えてくれました。メソメソを引きずらないよ
にと、おばさんなりの心遣いだと思いました。

新しい環境にきたものの、目標らしきものが見えなく、
何となくモヤモヤしていたのを見透かされて、おばさんは
おそらく
「男の子が泣いていいのは、親の死に目だけだよ。若い
うちはきついこともあるだろうけど、まじめにコツコツ
やっていれば、そのうちいいことあるって、腐らずにやん
なさいな」
と無言のエールを贈ってくれていたのでしょう。
ありがとうございます。”登記所のおかあさん”。

カワシューは登記簿謄本を読みこなせるエキスパートに
なろうと心に決めました。