Yes!カワシュー・Vol 11 ~新宿トワイライト~

Yes!カワシュー

ビルの工事事務所勤務となり、6カ月。サラリーマン
カワシューにとっては、激動の日々を過ごしました。
朝は7時半から朝礼があり、あっという間に夕方、酒盛
りの準備、本番、そして、後かたずけで、どうしても20
時半くらいの終業となり、22時過ぎに家に帰って、あと
は寝るだけの毎日。

当時は完全週休2日制ではなく、隔週土曜日が休みの時
代。出勤の土曜日は「半ドン」と言って、昼までの勤務で
したが、工事事務所はあまり関係なく、半ドンの土曜日も
通しで働いていることの方が多かったです。
また、タイムカードもなく、手書きの自己申告だったので
毎月10日の締め日には、Y課長に自己申告のタイムカー
ドを見せて、調整をしてもらいました。
「この日は、もうチョイ、残業つけとけや」とか言って
かさ増し労働時間として申告していました。
残業の制限とかはない時代で、いいんだか、悪いんだか、
よくわかりませんが、長閑な昭和の一コマでもあり、今で
言うブラックな働き方だったと言えます。

そんな状況のなか、Y課長からは
「疲れたら、これ、自由に使いんさい。ワシに聞かんで
エーけーのー、なくなったら、またやるケー」と渡された
のが、共同無線の「タクシーチケット」1冊。
これには救われました。新卒の若造に「タッ券」時々渡す
なんて、バブリーな時代だったな、と実感しました。

1984年(昭和59年)ビルも竣工に向けて、テナント
の内装工事もほぼ終わり、官庁検査を残すのみという、
クリスマス目前の、とある日の日没前、Y課長、ニヤニヤ
しながら、カギの束をチャラチャラ鳴らし
「(小手指の)ノリちゃん、川原、行ってみるか?
まぁ、ついて来いや」とY課長。

(どこへ行くんだよ?ちゃんと言いなよ、怖いんだよ!
何考えてんだよ!また、思い付きで行動すると、ロクなこ
とにならないぞ!)と心の中で叫びました。

と荷物用エレベータに乗って屋上階へ。
クリスマス目前のとある日、時刻は16時過ぎ、冬場の日
没はカウントダウンと言う時間でした。
西新宿方面を見渡す屋上からはすでに紺からオレンジ色の
トワイライトのグラデーション。その中に高層ビルのシル
エット。この景色を見せたかったY課長の粋な計らいでし
た。
Y課長、「太陽にほえろ!」の裕次郎モードのスイッチ
が入っており、自己陶酔MAXという状況でした。
カワシューの作業服のポッケには、いつも「写ルンです」
が入っていたので、すかさず絶景を残しました。